デジパチとは、当時流行っていた権利台のパチンコ機種で、デジタルスロットが揃うと権利が発生して一定時間出玉を得られるパチンコ台のことだ。

このデジパチ(一当たりで大体3000円〜5000円分出る。ゾーンに入ると連荘する )をモーニングタイム(権利台が多めに設定されている開店時間)に並んで打ちに行くのである。

これを仲間4〜5名募って1000円だけ握りしめ、1000円で当たりを引かなかったら撤退。当たりを引いても連荘ゾーンを抜けたら撤退。(10回回して当たりを引かなかったらゾーン外しと判断して撤退)という鉄のルールを守って勝ち金を全員でシェアする。

渋谷井の頭線のすぐ横の日拓でひと仕事終えたあとは、109の斜め前の二階がカフェスペースになっているパン屋で焼きたての旨いパンを食べ、その日のアガリを分配しながら駄弁る、そこまでがセットだった。いま思えばトップクラスに下衆いブランチだ。

ブランチのあとは家に寝に帰る奴、アガリを種銭に雀荘やポーカーに行く奴、そのまま109へナンパに繰り出す奴とみなそれぞれだった。

実際のところ、この方法は冬休み2週間で一人当たり十数万の利益を叩き出した。大学生にとっては太い金額だ。しかも朝早起きするという部分を除けば、平均1時間〜2時間で終わるので、午後〜夜は別のバイトも出来るし、プライベートの時間も確保しやすい。

モーニングゴロは”美味しいバイト”だった。

この”美味しいバイト”を紹介してくれたヨヨギに連れられて、いつもはそこから街に繰り出していた渋谷で山手線に乗り換えて新宿へ向かった。

新宿東口を出てまっすぐ進み、靖国通りを渡ると歌舞伎町だ。

案内されたのは新宿歌舞伎町セントラル通り中程を右に曲がった早朝から行列のできることで有名な11チャンネル近くの雑居ビルだった。

(え?ここ?)

——

「バイト募集!時給1200円」

確かにヨヨギの言う通り、1200円と書いてある。学生の出来るあらゆるバイトのスタート給750円程度だった当時としてはかなりの高時給だ。

しかし、店の入口には大小さまざまなAV女優のポスターが貼ってあった。そこはいわゆる裏ビデオ屋だった。

実は裏ビデオ屋に入るのは生まれて初めてだ。こういう歌舞伎町の妖しげなピンク系のお店は、ボッタクリだったりしたら怖いなぁと日頃から避けて来た。日和ったことをヨヨギに悟られまいと俺は、余裕だぜって顔で先陣きって店の暖簾をくぐった。

ピロリロン♪ピロリロン♪

「いらっしゃいませー……あ、バイトの子?二人ね?んじゃね、ちょっと狭いけどここ座って」

一人で店番をしていた店長らしき男が煙草を吸いながら、折りたたみの椅子を二つどこからか持って来た。

「えー、自分オダっていいます。一応ここのお店を任されてまして、丁度ひとり人が辞めちゃって……」

とオダがテンプレートの様な面接の枕を始めたところで、ヨヨギが割って入った。

「実は僕ら他にもバイトしていて、掛け持ちで交代交代にシフト入らせてもらいたいんですが……」

!?

やられた……ヨヨギは最初から一緒に働く気はなく、週6シフトで入るのはいやだから俺と半分ずつ週3回だけ入りたくて俺を誘ったのだった。

「あーなるほどね。こういう業界はパートタイマーってあんまり雇ってないんだけど、オーナーに話してみるわ。ていうか仕事の内容なんだけどね……」

ちらりとオダが店内に目線を移した。

(3)に続く