「正直今二人に辞められたら、俺の身体が持たないからさ」

実際の金額より不足しているとはいえ、全然貰えないと思っていたお金が、しかも2か月給料貰ってないと言っていた男の財布から出て来たのだから、俺らも黙らざるを得なかった。

かといって、恐らくこのままだと何かの都度々々オダの財布から金が出て行くことになるだろう。段々気まずくなって言いにくくもなるだろう。そもそも悪いのは金を出さないエビスだ。

そこで俺は折衷案を出すことにした。

「週払いって出来ます?その週の金曜か土曜、最終シフト日の売り上げからその週の分のバイト代をもらいたいんですが」

オダもヨヨギも一瞬驚いた顔をしたが、構わず畳み掛ける。

「すでにお金の件について僕はエビスさんを信用出来ません。本来なら今すぐここを辞めて今日までの分を毎日取り立てに来たいくらいです。でも世話になったオダさんに迷惑をかけるのも嫌です。かといってお金がもらえないのなら手伝う義理もありません。ですので週払い制を認めて欲しいんです。それなら僕らもやる気が出るし、それで売り上げが上がったら一石二鳥じゃないですか?」

オダもやれやれといった表情で

「わかった。その方向で話つけるから、今日は上がっていいよ」

と吸っていたキャメルをもみ消しながら言った。

翌日シフトに入っていたヨヨギから電話がかかって来た。

「おう、今チョイナで麻雀打っとるんじゃけど……週払いの件、話しつけてくれたで。とりあえず先月と先週までの分は分割でってことになったけど、今週からこないだお前が言っとった感じでバイト代抜いてええらしいわ。」

ここまでの分が分割というのが気に食わないが、毎週それなりに金が入って来るのはありがたかった。(アテにしていたバイト代が入って来なくて予定が狂ったせいもあるが)

金曜日にシフトに入った俺は、言われた通り売り上げ封筒から今週分のバイト代を抜き取って、こう書き足した。

1200円×20時間=24000円 確かに受け取りました。4/21

家に帰るとまたヨヨギから電話がかかって来た。

「金貰えたんか?おーマジか!オダさん使えんじゃん!お前どうやったんや?うん、うん、そんなんでええんか……」

俺のやったやり方を一通り確認したあとヨヨギがとんでもないことを言い出した。

「ちょっちその金貸してくりぃや。クラブ行こうで」

「明日あんたも行けば金入るじゃん。遊びに行くなら明日にしようよ」

「明日返すけーええじゃないか。カズヤが今日ゴールド行きたい言うてるんじゃい」

カズヤはヨヨギと地元が一緒の専門学校生で、背が高く顔が木村一八に似たイケメンで、確かにカズヤと一緒にナンパをすると明らかに成功率が違った。

さらに付け加えれば、カズヤが先日ナンパして捕まえた女が、風間トオルだか阿部寛だかと映画で共演もしたこともあるタレントだったらしく、ちょうど今女が切れているヨヨギにはそれが羨ましくて仕方ないようだ。

ふざけんなよと悪態をつきながらも、臨時収入とナンパという甘美な響きに負けて、つき合うことにした。

「ほんじゃ俺んち集合な」

なんで金貸す方が迎えに行くのよと思いながら服を着替えて歩いて10分ほどの距離にあるヨヨギの家に向かった。

(7)に続く