話は少し前にさかのぼる。

「今年の春は勧誘するで」

毎朝の日課だったモーニングゴロを終え、109ほど近くのパン屋の2階のカフェで、ヨヨギが唐突に口を開く。

「勧誘?」

その日の勝ち金を分配していた俺の手が止まる。

「サークル作ろうと思うんじゃい」

また訳の分からないことを言い始めたものだ、と俺は新しい煙草に火をつける。

「……ということで、今年の春は女子大の入学式回って女の子勧誘な!予定あけとけよ」

「はぁ?サークルって活動内容は?ていうか部員は誰がいるのよ?」

「活動なんて後からなんとでもなるって。メンバーは俺じゃろ?カズヤじゃろ?お前じゃろ?あと俺の高校の同級生で慶応いっとるホソダの4人は決まりな。それにカズヤの専門の後輩にも声かけるつもりじゃけ」

なんだなんだなんだ?活動内容未定の男だらけのインスタントサークル?胡散臭すぎて俺だったら絶対入りたくないんですけど。

その時はどうせいつもの”言ってるだけ”だろうくらいに思っていた。

「おう、これ見てくれや!前に言うとったサークルのビラ出来たで」

Santa Monica family

手書きのビラの上部にはデカデカとロゴが踊っていた。

「サンタモニカファミリー?」

「ええ名前じゃろ?ロスにある地名からとったんじゃ」

学生サークルの名前をロサンゼルスの地名から取ってくる、そのハイセンスさにどうしても共感できなかったが、それよりも気になったのは

”夏は西海岸で合宿!冬はスノボ合宿!オールシーズン遊びまくろう!”

という更にハイセンスなキャッチコピーだった。

「西海岸って?」

「ん?もちろん”ロス”の西海岸じゃい。カズヤの後輩の兄貴がロスに留学しとるらしいけ、そこのステイ先のハウス貸してもらうんじゃ」

ため息まじりにつづけて聞く。

「スノボは?」

「カワダ、お前も知っとるじゃろ?あいつの実家長野県の何だかバレーってとこでペンションやっとるらしいんだわ」

スノボ?あんたスノボはおろかスキーもやったことないじゃんか?それよりカワダってあいつ大学どころか中卒のフリーターだぞ?

もはや”学生”という括りすら取っ払われたヨヨギの壮大な計画を前にして、反論する気力すら薄れてくるのだった。

(2)に続く