GWまでは毎週、例の入学式でアンケートを取った女子大生とアポを取っては新歓という名の合コンをし、予定のない日は夜な夜なクラブでナンパをするという日々を送っていた。

ちょっと金やばい……かも?

最初のうちはヨヨギに誘われたモーニングゴロとか裏ビデオ屋のバイト代のおかげでそれなりには余裕があったが、この頃にはそれも辞めてしまっていたので、じわじわと金が目減りしていっていた。

裏ビデオ屋は辞めたっていうよりは、店長が警察にもってかれたのが大きいが……(90年代アンダーグラウンドグラフフィティ 歌舞伎町裏ビデオ屋編8)

そろそろバイトでも探すか……

とバイト情報誌を立ち読みしていたところに、突然ポケベルが鳴った。030で始まるドコモの携帯の番号だったが、見覚えのない番号だった。

「もしもし?ベル鳴ったんですけど?」

「あ、ナカタニですけど。あのオダの紹介で……」

ナカタニは裏ビデオ屋にマスターを卸していた歌舞伎町のヤクザだ。何度か店で顔を合わせたことがある。色白で細面、訥々と話すタイプのどちらかというと強面とは正反対の印象だった。

「あー、はいはい。覚えてますよ。」

「あの……今なんかシゴトとかしてる?紹介したい人がいるんだけど。」

「や、今ちょうど何もしてないですよ。」

「あ、そう。じゃあ今から君のポケベルにその会ってほしい人の携帯番号入れるから、電話してもらっていい?マツモトさんっていう人だから。」

電話を切ってすぐにポケベルが鳴った。言われた通りその番号に電話をすると、低い声が耳に飛び込んで来た。

「もしもしー。」

「あ、ナカタニさんに電話するように言われた……」

「あー。聞いてますよ。実はちょっと人手が足りなくて、もし今何もしていないんなら一度会って説明したいんですが。やるかやらないかは話を聞いてからでいいですから。わたしマツモトと言います。」

マツモトの低い声は、ハキハキとしていて聴き取りやすく、どういうわけか断る隙がなかった。気づくと待ち合わせ場所をメモして電話は終わっていた。

◯月×日 14時
池袋 東口 銀座茶廊

渋谷と下北沢にばかり遊びに行っていた俺にとって、池袋は片手で足りるくらいしか行ったことのない街だった。

面倒くさいなぁと思いつつも、行くことにした。タイミング良くバイトの話が降ってきたせいもあるが、それよりもマツモトの声色と喋り方がどうしても耳に残ったからだ。

「偽学生サークル編」終了 次章「池袋マンションイメクラ編」に続く