2日ほど前、マツモトが陣中見舞いだと缶ジュースを持って事務所に現れたことがあったが、ホワイトボードの取材日程を見て「少なすぎやせんか?」とナカハシに圧をかけていた。

「た担当の人がななかなか捕まらなくて…」とか「しゅ取材の日程とお女の子のスケジュールが合わなくて…」と口ごもりながら言い訳をしていたが、俺はその本当の原因にうすうす勘づいていた。

ナカハシが愚図すぎて取材依頼の電話をさぼっていたからだ。滑舌が悪すぎて取材の人や女の子とのコミュニケーションが円滑にいかないってのもあるかもしれないが、それよりも問題なのはスケジュール調整のやり方だ。

「あ、あのサユリちゃん?ナカハシです〜。明日のひ昼に取材あるんだけど来れない?え?ダメ?頼むよ〜」

順序が反対なのである。
普通に考えたら”取材可能な女の子の可能な日程の候補をいくつかピックアップしておいて、取材担当者をつかまえたらその候補日の中から選んでもらう”方が圧倒的に効率的だ。

携帯電話がまだ普及してない時代だからこそ、出勤も含めて予定の管理を丁寧にかつ効率的にやらなければならない。

(こんなのが名義人でこの店大丈夫かな?)

数日顔を合わせただけで、ここまで露呈しまくるナカハシの愚図っぷりに少々不安になってきた。

いよいよ明日がオープンの日となった日曜日、いつものように出勤すると今までは見たことのない書類を二つ見せられた。

「こ、こっちが出勤表ね。それとこっちがリスト表。ひ、左端にタレントさんの名前を書いて…」

風俗店で働く女の子の呼び名は色々あるらしい、コンパニオン、タレント、キャストなどなど。1年A組ではタレントと呼ぶことになっている。

見たことないというのは間違いで、リスト周りを整理整頓している時に見つけたファイルの中に、これの原本を目にしていた。ナカハシが前日までコピーしていなかったので営業する上での重要な書類の説明が今日になっただけだ。

出勤表には日付と出勤するタレントの出勤時間と退勤時間が線グラフのように書き込まれていた。
ペラリとめくると2枚目にはその次の日、3枚目にはさらに次の日の出勤が書き込まれていた。

リスト表は左の列には出勤したタレントを一人ずつ記入し、お客がつくとコースとプレイの開始時刻と終了時刻を書き込むようになっていた。

指名料金やトッピングと呼ばれるコースとは別に発生する追加料金なども書き込むので、これ一枚でタレント一人一人の案内状況やその日の稼ぎもわかる仕組みだ。

これにチケットと呼ばれる伝票を合わせた3つが最低限営業に必要な紙ものである。
チケットにはコースやトッピング、終了時刻などを書き込んでタレントさんに渡す。タレントさんはそれを見てコスチュームやあがり時間などを確認する。

お客に女の子・コース・コスチューム・トッピングを選んでもらいそれをチケットに書き込んで会計をもらう。チケットの内容をリストに書き写し、女の子の準備が出来たら終了時刻を書き込んだチケットを女の子に渡しお客をご案内する。

「明日はナギサちゃん完売だぜ!いえい!」

ナカハシが予約表を見ながらガッツポーズしていた。

(6)につづく