いつの間にか俺の仕事はどんどん増えていった。

電話受付からタレントの面接、出勤管理に加えて、取材のアポ取りもするようになった。

電話受付は、道案内で迷う人が多かったので色々なルートで池袋駅からお店のあるマンションまで歩いて、目印を探してはマッピングしてリストに共通認識として掲示した。

出勤もなるだけ曜日固定にして集客の見込める曜日や時間帯に厚めに出勤数を確保した。

未経験者用と経験者用にマニュアルを分けて作成してみたりもした。

流石に単なるバイトなので、風俗業につきもののタレントの管理などは避けていたが、ナカハシの愚図ぶりに気づいたタレントは、段々俺の方に話しかけてくるようになった。

手本のないままタレント管理をやってみると、女の子それぞれの目標金額とか、OLや学生などの本業との兼ね合い、お客さんとの相性などなど、毎日のように発見があってそれが面白かったし、自分の対応が上手くいった時には味わったことのない満足感があった。

 

さらに1年A組は当時流行りのブルセラ系イメクラだったので制服の確保という仕事もあった。

当時のブルセラショップで買い揃えようとすると、有名女子校のものだと5万〜10万なんていうとんでもない額のものもあった。

だが、少し前にヨヨギと始めた偽学生サークルがここで役に立った。

勧誘で知り合った女子大生に高校時代の要らなくなった制服を買い取らせてもらえたのだ。
相場の買い取り価格より安く提示しても、もともとショップに売るという発想のない子の場合も多く、何なら夏服冬服サブバッグから体操服までフルセットでつけてくれる子もいた。

今ままで服の下の肉体にしか興味のなかったが、新しい制服をありがたがる常連客などをみるうちに、何処の制服がニーズがあるとか、サブバッグや指定のソックスの有る無しなど、妙な知識が増えてしまった。

 

名義上社長である(会社ですらなかったので社長でもないのだが)ナカハシには朝の店開け、買い出し、掃除、終業後の締め作業に専念してもらった。

それなのに俺がいない間に未経験のタレントに再講習だとか、出稼ぎの家のない子を店泊させてリアル夜這いしたりと、日々トラブルを起こして俺の仕事を増やしてくれていた。

 

ある時マツモトが様子見に陣中見舞いに来た時に

「明日時間とれないか?仕事前の1時間でいいから」

と耳打ちして来た。ナカハシに気づかれないように相づちを打つと

「じゃあ前に会った喫茶店に15時」

(この時が来たか…)と自分なりに確信めいたものがあった。

 

翌日指定された時間に銀座茶楼へ行くと、すでにマツモトは到着していた。

「お疲れさん。君が入って来てからタレントの出勤も安定しているようだし、取材の件数も増えた。予想していた以上の働きを見せてくれとる。」

風俗の仕事とはいえ、褒められるとやはり気分がいい。それよりも店にいないはずのマツモトが、1年A組の内情にくわしいのにも驚いた。

「そこで、相談なんだが…」

(やれやれやっぱり名義人の話かよ…)

と、断る準備をしようとした俺の耳に入って来たのは予想だにしていない提案だった。

(8)につづく