旧「かんなみ新地」一帯、尼崎市が購入へ 風俗街の「復活」封じ、更地にして売却
2022/5/31

 「かんなみ新地」と呼ばれた兵庫県尼崎市神田南通3の風俗街が昨年11月に同市と兵庫県警から警告を出されて一斉閉店したのを受け、同市は一帯の土地建物を取得して更地にした上で、売却する方針を明らかにした。過去には警察の摘発後しばらくして営業を再開することが繰り返されており、周辺住民から根本的な対策を求める声が上がっていた。


 市によると、かんなみ新地は敷地約680平方メートルで、実質2棟の長屋に37戸が連なる。戦後から約70年にわたって自由恋愛を名目に違法な風俗営業を続けてきたが、昨年11月に尼崎市長と尼崎南署長が連名で風営法に基づく警告を出して一斉閉店した。

 現在は8店舗がバーやそば店などの飲食店として営業しているが、廃業から半年が過ぎても空き店舗が大半を占め、防犯や治安面の懸念も浮上していた。

 登記簿上の地権者は25人に上るが、通路など共有部分の権利関係は複雑になっている。このため、市は6月から実態調査を始め、11月まで地権者説明会を複数回開いた上で、12月補正予算案に土地取得費を計上する予定。2023年3月には土地建物の取得を完了させたいとする。

 尼崎市では21年、法律や規制の対象外だった暴力団幹部宅を、全国の自治体で初めて買収した。今回も同様に根拠となる法令はないが、近くに小学校もあり、市は周辺住民の安心のためには取得が不可欠だと判断した。

 一帯は阪神尼崎、出屋敷駅に近い好立地にあるが、民間に売却を任せれば、買い手が現れずに反社会的勢力が介入する恐れもあるとみている。稲村和美市長は「踏み込んだ取り組みをしなければ解決は難しい。長年の懸案だった違法風俗店の撲滅をやり切りたい」と意欲を見せた。
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