「飲み屋どうですか」ガールズバーも客引き規制、ミニスカ女性に声かけられ続けた男性「迷惑」
2022/6/25

 大阪の繁華街で横行する「客引き」行為について、ガールズバーも警察による取り締まりの対象に加える改正大阪府迷惑防止条例が、7月1日に施行される。福岡県に続いて全国2例目。これまでキャバクラなどの風俗店に限られ、ガールズバーに対しては行政指導や処分にとどまり、効果は限定的だった。外国人観光客の受け入れが再開された街では、活気に水を差さぬよう、悪質行為の抑止に期待が高まっている。(林信登、古市豪)


「街の印象が悪くなる」

 金曜日の24日夜、ミナミの繁華街は会社員や観光客らでにぎわっていた。飲食店が並ぶ通りにはガールズバーの店員とみられるミニスカート姿の女性が60人ほど立ち、行き交う人に「飲み屋どうですか」と声を掛けていた。

 埼玉県八潮市から観光に訪れた男性会社員(31)は続けて3人から声をかけられ、「しつこくて迷惑。客引きのせいで街の印象が悪くなる」と話した。地元商店主らによると、コロナ禍の影響もあって、客引きは一時目立たなくなっていたが、感染状況が落ち着いてきた5月頃から増えたという。

 ガールズバーは女性店員がカウンター越しに酒を提供し接客する飲食店で、十数年前から東京や大阪などの繁華街で広がった。手頃な料金で女性との会話を楽しめるとして人気で、ミナミでは現在、数百店が出店しているとみられる。


悪質の基準は

 府迷惑防止条例では、2005年から風俗営業法対象の店による客引きを府内全域で禁止。接待を伴うキャバクラや性風俗店などで、常習的に行った場合、6月以下の懲役か、50万円以下の罰金を科すことができる。府警は今年4~6月の3日間で行った取り締まりで計20人を逮捕した。

 改正条例では、酒を提供する飲食店のうち、異性への好奇心をそそるような方法で接客する店も対象になる。ガールズバーなどがあたり、こうした方法をとらない居酒屋などは含まれない。同様の条例は福岡県で15年6月に施行されている。

 大阪府の現行条例では、付きまといや衣服をつかむなど、悪質な客引きをすれば業種を問わず違反となるが、府警幹部は「悪質な行為の基準があいまいで、現場が判断に困るケースがあった。ガールズバーを名乗るだけで摘発対象になる改正条例の効果は大きいはずだ」と話す。

 これまでも、大阪市による行政指導や処分は行われてきた。14年施行の市客引き禁止条例では、あらかじめ指定した「禁止区域」で、あらゆる業種の客引き行為を禁じている。指導員が巡回して指導するほか、市のホームページで違反者の氏名や店名を公表することもある。

 だが、市によると、過料を科されても、違反を繰り返すケースもあるといい、地元商店会からは「行政処分だけでは効果は薄い」とする声が上がっていた。


「半グレ」弱体化

 府警によると、ガールズバーは、暴力団には属さず違法行為を行う集団「半グレ」などが経営に関わっているという情報もある。

 ガールズバーはキャバクラより女性店員の数を抑えられるため、もうけが出やすい。店に客を連れ込み、酔っ払わせて法外な料金を要求する手口でぼったくりを繰り返していたグループも存在した。

 府警は18年、恐喝容疑などでの取り締まりを強化し、元暴走族ら約120人で作る主要グループを解散させた。このグループでは約20店を経営し、売上金を暴力団に上納していたことが判明した。

 目立った違法行為は沈静化したが、その後、別グループなどが水面下で活動を続けている。府警は改正条例で客引きを減らし、半グレの弱体化につなげたいとしている。
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