ガールズバーNO 大阪で客引き新規制 「目で合図」…奇策で対抗
2022/6/29(水) 18:00配信

 各地の繁華街で乱立し、トラブルが後を絶たないガールズバー。大阪府全域でその客引き行為を全面的に禁止し、刑事罰の対象に加える改正府迷惑防止条例が7月1日に施行される。大阪府警は「新たな武器」で犯罪行為の一掃も目指すが、店側は早くも規制強化に「奇策」で対抗する動きを見せている。

 ガールズバーは女性スタッフがカウンター越しに酒を提供する飲食店と位置づけられ、都市部の繁華街で十数年前から急増する。府内では少なくとも数百店が営業しているとされるが、強引な客引きや客に密着する過剰なサービスなどもたびたび問題になってきた。

 「名物」と皮肉られるほど客引きが横行していた大阪では2005年、客のそばで接待するキャバクラやホストクラブなど風俗営業法の対象店について、府迷惑防止条例で客引きが全面禁止され、警察の取り締まり対象になった。常習性が確認されれば、6月以下の懲役か50万円以下の罰金を科すことができる。

 ◇行政処分の効果は一時的

 しかし、飲食店の女性店員が「接客」するガールズバーは風営法の対象外で、悪質な客引き行為を除いて摘発が難しい。

 大阪市は14年に独自に制定した「客引き行為適正化条例」で、西日本最大級の繁華街のキタ(大阪市北区)とミナミ(同市中央区)の広範囲をあらかじめ禁止区域に指定し、あらゆる業種の客引きを禁じた。最大5万円の過料に加え、市のホームページで店名や氏名を公表することもある。

 ただ、こうした行政処分は効果が一時的で、指導員の巡回時間を避けて客引き行為を繰り返すガールズバーも少なくなかった。地元商店主らから警察には客引きを巡る苦情が後を絶たず、府警のある幹部は「繁華街の実態に対応できるよう、府条例を改正する必要があった」と話す。

 ◇福岡に続き2例目

 改正条例は酒を提供する飲食店のうち、異性の好奇心をそそる手法で接客する店も警察による取り締まりの対象に加えた。ガールズバーや「メイドバー」と呼ばれるメイド服姿の女性が接客する店なども含まれる。同様の条例は福岡県に続いて全国2例目になる。

 25年に大阪・関西万博を控え、新型コロナウイルス禍で失われたにぎわいの復活を目指す大阪。ミナミの道頓堀商店会長を務める上山勝也さん(60)は「お客さんが『また来たい』と思う街を目指しているのに、悪質な客引きは迷惑だ。警察の摘発に期待したい」と話す。

 ◇「暴力団の資金源」解明も念頭

 ただ、府警がガールズバーの取り締まりに神経をとがらせる理由は、客引きの一掃にとどまらない。

 18年、暴力団に属さない「半グレ」と呼ばれる不良集団の一つが複数のガールズバー経営に関与していたことが表面化し、数十人が逮捕された。少女を客引きに使い、店に誘い込んだ客に法外な料金を請求し、支払えなければ監禁・暴行を繰り返す――。そんな違法行為で月5000万円以上を売り上げ、暴力団の資金源になっていたとされる。

 府内では他の集団が別の店舗の経営に入り込んでいたことも発覚。府警はガールズバーを舞台に違法行為が横行している疑いがあるとみており、関係者は「歓楽街の犯罪を撲滅していきたい」と語った。

 ◇戎橋に30人超の女性たち

 6月13日夜、「グリコ」などの巨大看板のネオンがきらめくミナミ中心部の道頓堀・戎橋(えびすばし)。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、飲食店への時短営業の要請が解除された今春以降、繁華街の客足は戻りつつある。

 「飲み放題 ¥2200」「♡チャージ¥500円(1時間)」

 ミニスカート姿に作り直した和服やメイド服を着た女性が、料金と店名を大きな文字で書き込んだボードを掲げ、行き交う酔客らに笑顔をふりまく。

 その数は30人を超えるが、誰も声をかけない。積極的に勧誘する客引きと異なることを強調し、行政指導もかわす狙いがあるとされる。

 「オーナーに『通行人には話しかけないように』と指示されているので、目で合図を送ってます」。取材に応じた女性(21)はこう漏らした。

 女性が働く店は「コンセプトカフェ」と名乗る飲食店で、看護師や忍者の衣装を着たり、オオカミの耳の小道具を頭につけたりした女性スタッフがカウンター越しに接客しているという。「最近、ミナミではやってますよ」と言う女性。記者がガールズバーとの違いを尋ねると、「うちは男性客とおしゃべりのみです」と繰り返すだけだった。

 女性は「7月からは路上に立たず、主にネットで店を宣伝するつもりだ」とも付け加えた。

 ◇「ガールズバー」名乗らず、規制逃れ?

 捜査関係者によると、大阪府内の歓楽街では府迷惑防止条例の改正を念頭に、ガールズバーと名乗らない店が増えている。大阪府警幹部の一人は「店側も規制から逃れようと学習している。警察は営業実態を見極め、該当すれば摘発する」と譲らない。

 条例改正でミナミの街からガールズバーの客引きは消えるのか。「減らないでしょ」と断言するのは、ある店舗の客引きを請け負う男性(20)だ。店に連れて行った客の飲食代の約2割を報酬として受け取れる仕組みで、毎月の収入は数十万円に上るという。男性は「稼ぎはいいし、7月以降も違反にならないギリギリの手法を探るんじゃないですか」と語った。
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