世界最大規模「性接触ネットワーク」 ソープランド口コミサイトから分析 静岡大教授ら発表、感染症予防への応用に期待
2022/12/21

 静岡大工学部の守田智教授(52)と同大博士課程修了で長崎大熱帯医学研究所の伊東啓助教(34)らのグループがこのほど、国内性風俗店で「誰と誰が性接触をしたか」というつながりを表す性接触ネットワークの分析に成功した。店舗型風俗店(ソープランド)の口コミサイトを調べ、世界最大規模という男性客と女性スタッフの計約7万2千人の結びつきを明らかにした。

 研究成果は、無料で閲覧できるオープンアクセスの国際科学誌「プロスワン」に掲載された。守田教授は「社会構造の理解が進み、性感染症拡大予防などへの応用に期待できる」とみている。

 プライバシーの観点から調査が難しい性接触による結びつきを、口コミサイトを解析して可視化した。静岡県内の約10店舗を含む全国約1190店のソープランドの約66%をカバーするサイトを調べた。延べ12万件以上の口コミから男性客約5万5千人と女性スタッフ約1万7千人のつながり関係を抽出した。

 都道府県や店舗別の口コミ数や、男性客が各地で風俗店を利用した頻度などを分析した結果、各地域や店舗ごとに集団状のつながりがあるほか、東京や神奈川など大都市圏間で強いネットワークが見られた。
北海道と福岡県など遠隔地の間でも強いつながりがあることが浮かび上がった。また、多くの男性客の性接触は少人数にとどまる一方、一部に極めて多くの女性スタッフと性接触がある人がいることなども分かった。
男女とも平均9・87人を介して全員が結びつくネットワーク構造だった。

 守田教授と伊東助教は「従来のアンケートによる調査などでは限界があったが、巨大な科学的データを示せた。社会ネットワークを理解する一助にしたい」と話した。

 <メモ>社会ネットワーク 世界中のコンピューターや空港など人や物、共通の結びつきがある点を線で結んだ構造体をネットワークと言う。社会ネットワークは社会に所属する友人関係や企業の取引関係などを示した構造体のこと。知り合いの知り合いをたどると6人目で世界中の誰とでもつながれるというスモールワールド仮説もその一つとして知られる。現実の組織や経済活動といった複雑な社会構造を解明しようと、さまざまなネットワーク分析が行われている。
静岡新聞