ポケベルの呼び出し番号はエビスの携帯だった。折り返しかけるといつもの眠たい声が出る。「ヨヨギから聞いとると思うけど、今日デコが来てのう。今オダに行ってもらっとる」え?オダさん?あんたじゃなくて?「明日店来る前にちょっと寄って欲しいところがあるんやけど。」
2018年01月
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋篇(7)
ヨヨギのクラブ遊びにつきあって朝帰りしたせいもあって、夕方前にムックリと起きた俺はコンビニで弁当とマンガ雑誌を数冊買ってきて、家でノンビリとしていた。夜11時を過ぎた頃に電話が鳴った。「おう、わしじゃ。とんでもないことになったんじゃい。」電話口のヨヨギは息
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋篇(6)
「正直今二人に辞められたら、俺の身体が持たないからさ」実際の金額より不足しているとはいえ、全然貰えないと思っていたお金が、しかも2か月給料貰ってないと言っていた男の財布から出て来たのだから、俺らも黙らざるを得なかった。かといって、恐らくこのままだと何かの都
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋篇(5)
このお店には裏ビデオ屋の仕事以外に一つ変わった仕事があった。夕方6時になると、お店の斜め向かいにある新宿カラオケ本舗から製氷機の氷をゴミ袋一杯に詰めてもらって、それを区役所通り沿いの雑居ビルの地下にある飲み屋「どことなく」に運ぶ。「どことなく」はオーナーの
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋篇(4)
こんな狭い店内に男二人に客一人じゃ居心地悪いだろうなと思いつつ、オダの接客を見ておかないわけにもいかず手持ち無沙汰に店内をうろついていると「日向……あります?」客の男が何故か俺に話しかけて来た。ヤベぇ!と動揺したかしないかのタイミングでオダが「ありますよ
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋篇(3)
ここで働くようになってから知ったことだったが、90年当時いわゆるモザイクありレンタルAVの会社が倒産し、そのモザイク処理前の無修正流出ものというのが出回り始め、渋谷や新宿ではそれをコピーして販売する”裏ビデオショップ”があちらこちらに出来ていた。ざっくり言え
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋編(2)
デジパチとは、当時流行っていた権利台のパチンコ機種で、デジタルスロットが揃うと権利が発生して一定時間出玉を得られるパチンコ台のことだ。このデジパチ(一当たりで大体3000円〜5000円分出る。ゾーンに入ると連荘する )をモーニングタイム(権利台が多めに設定されてい
(90'sUGG)歌舞伎町裏ビデオ屋編(1)
「あ、どうも はじめまして。マツモトです」待合せに指定された池袋の喫茶店”銀座茶楼”に現れた男の、低くガサついた声を聞いて思わず振り返る。濃紺のダブルスーツに高そうな時計、当時ヤクザとその愛人しか持っているのを見たことのないドコモの最新ムーバにパンチパーマ