(前回の予告)次回は、携帯キャリアの公式コンテンツについて、思い出し出しかければと思っています。
今回はITバブルの中でも印象深い携帯コンテンツ事業についてお話ししたいと思います。
・宣伝・利用・課金が3つ揃った「iモード」
前回少し話題に出た「パーフェクトパッケージ」というワードですが、僕が勝手に名付けた単語です。
宣伝・利用・課金が三つ揃ったサービスを指していったのですが、iモードがまさにこの三つが揃ったサービスであり、とんでもない優位性を持っていた訳です。
つまり、携帯電話というある意味強制的にユーザー個々に行き渡った端末で、コンテンツを宣伝するプラットフォームをこしらえて、さらに利用者から携帯通話料金と一緒に集金するというビジネススキーム(商売の仕組み)をIモードが完成させたからに他ありません。
これをさらに成功させる為には
1、携帯電話の利用者をどんどん増やす
→初期費用を下げる。機種代を下げる。宣伝をする。
2、携帯電話のユーザー間のコミュニケーションを促す
→これは通話とかメールをユーザー間でどんどん使ってもらう。
3、iモードという新しいサービスを使わせる
→携帯電話に一発でiモードポータルへ飛べるようなボタンがありましたね。とにかくiモードを知ってもらって、使ってもらうのに慣れてもらわなければなりません。
4、携帯電話がなくてはならないものになる
→周りの友達も持ってるし、持ち歩けるコミュニケーションツールとして、ライフスタイルを提案し、その便利さを享受してもらう。
こうなると
→「料金未払い等で電話が止まると色々と困る。」
→「ちゃんと料金を払ってdocomoの携帯を利用し続ける。」
んで1、に戻るわけです。
という今となっては当たり前の流れをどんどん作り上げていって、携帯電話市場全体を拡大し、さらにライバル他社(この頃はKDDIとかJphoneとかTuKaとか)との競争にも勝たなければなりません。
しかも最初のうちは、携帯キャリア間でメールのやり取りも出来ませんでしたから、その競争は熾烈でした。(当然、序盤はdocomoの圧勝だったわけですが……)
脱線しますが、1990年初頭頃に、携帯電話の加入代理店というものが現れて、携帯会社もその代理店を窓口に契約したユーザーの通話料金を歩合としてし代理店に支払うという
「タイムマシンがあるならその頃に飛んでいって誰しも代理店がやりたい!」
と思っちゃう様なボーナスタイムがあって、それのおかげで各代理店は当時買い取り価格で何万円とした携帯本体の料金を格安でばらまくキャンペーンなんかを行って、契約者獲得に励んでいたのでした。
各キャリアが競争に打ち勝つためにおこなった施策の中で、注目しないといけないことと言えば……
コンテンツの充実
でした。
・コンテンツプロバイダーの台頭
要するに、iモードやezwebなんかのコンテンツ課金型プラットフォームにおいて、有力な施策の一つは、
イケてる着メロサイトを作るとか、有名占い師の占いコンテンツを作るとか、天気予報とか待ち受け画面サイトとか、そういった
「ユーザーが欲しい!」
と思っちゃうようなコンテンツを集めることでした。
かくいう僕も当時は、
「競馬新聞の情報が月に300円で読めるんですよ〜」
とか
「サンリオキャラの待ち受け画面がダウンロードし放題で、月額300円なんですよ〜」
なんていわれても、それってそんなに便利で嬉しいことか?必要なくね?って思っていたわけですから(ここでも自分の鈍さというか、ワクワク力の弱さに、向いてねえなあと思いますが...)
さてここで「コンテンツプロバイダー」という業態が台頭してきます。
ざっくりいうと……
様々なコンテンツをiモードで利用出来るコンテンツにパッケージしてリリースする
という業態です。
何人かの知人がこの手の会社で働いていました。
例えば、◯木数子の占いサイトを企画したとして、コンテンツホルダー(コンテンツの所有者)から使用許諾をとりつけて、生年月日で、今日の運勢をお知らせしたりするコンテンツなんかを作って、iモードでそれが稼働するようにサイトを作って、月額300円とか設定して課金ユーザーを募るわけです。
このときの課金の取り分は……
docomo(課金回収代行料金) : コンテンツプロバイダー(コンテンツの企画/監修費):コンテンツホルダー(所有権)
という利益共有=プロフィットシェアと呼ばれる報酬分配方式で、その割合が大体
10:35:55
とかになっていました。
2000年当時docomoの加入者が1500万人くらいでしたから、そのうちの1%が、月額300円の課金のコンテンツを利用したとすると……
300円×1500万人×1%=4500万円
先ほどの取り分に当てはめてみると……
450万:1575万:2475万
となります。しかもこれが毎月!!!
実際は全加入者の1%なんていうのは結構なモンスターコンテンツなので、誰しもがこうなる訳ではないですが、そのプラットフォームであるdocomoは全iモードコンテンツの利用料金の10%を課金回収代行料金としてゲット出来るので、それはそれは太い金額になります。
docomoは、通信インフラの設備投資費や維持費などなど色々な面でいわば商売の土壌を作って来たわけですから、当然っちゃ当然の権利ですし、コンテンツホルダーもいわば著作権保持者なので、多くの人に課金してもらうコンテンツであればある程、それなりの報酬を受け取る権利はあるでしょう。
一方でその間を受け持つコンテンツプロバイダーは、いわば代理店という立ち位置に近いので、プラットフォームも持たずコンテンツも持たない立場にも関わらず、かなり美味しそうに見えます。
・激化するコンテンツプロバイダー間の競争
当然docomoからコンテンツプロバイダーと認めてもらうのに結構なハードルがありました。
(携帯機種メーカーとか大手代理店が出資した子会社だらけというずぶずぶの利権構造でしたね)
とにかく、iモードは儲かる!ってことで、色々な企業や団体や著作権者が、iモードサービスを開始しました。それに比例するようにコンテンツプロバイダー間での人気のコンテンツホルダーの囲い込み合戦もどんどん熾烈になっていきました。
さらにいえば、課金者を増やそうとコンテンツホルダーが自社のiモードサービスを色々な方法で宣伝しますので、docomoとしてもコンテンツプロバイダーとしても加速度的に実益が期待出来ます。
大量なコンテンツがiモードで利用出来るようになると、ジャンルごとの人気ランキングが設置されるようになりました。
つまり例えば、着メロサイトをさがそうとすると、人気順に上位3サイトが最初に表示され、「もっと見る」をクリックすると上位20サイトが表示され、次の20件、次の20件...となるわけです。
なので、この上位3件に入るか入らないか?ってのは大きな差があって、コンテンツプロバイダーやコンテンツホルダーは、この上位3つに食い込むようにしのぎを削り始めたのです。
そういった携帯キャリア公式の有料課金サービスが業界を活気づかせ、株式市場でもコンテンツプロバイダー系の会社の上場するしないで大儲けする人が出たりしている一方で、あくまでも利用するユーザーには無料で利用してもらって、広告を表示することで収益を上げる形=TVやラジオと同じ様な広告形態もどんどん増えていきました。
次回は、僕が実際に携帯で利用していたコンテンツとか、当時の広告業態についてお話し出来ればと思います。
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