けたたましく鳴る目覚まし時計を止める。

「明日高田馬場駅朝8時集合な!」

昨日突然ヨヨギから電話でそう告げられたのを思い出す。
何でまたこんな朝早くからよ?と毒づきながらささっと身支度を済ませ、チャリに乗り三軒茶屋駅の方に漕ぎ出した。

地下鉄新玉川線に乗り込むと、周りの乗客がなんだかいつもと少し違う事に気がついた。

自分より年下の10代と思しき女の子たちがスーツを着ているというかスーツに着られているのが散見された。中には母親と一緒というのもいる。

寝ぼけた頭を何とか回転させて、そうか今日は入学式があるんだな。と理解する頃には乗り換えの渋谷駅に到着していた。

JR高田馬場駅に着くと、カズヤとホソダが既に到着していた。二人ともどうやら朝まで麻雀をやっていたようだ。

「おはよーっす。ヨヨギくんは?」

「ああ、あいつならさっきコピー取りに行くいうてコンビニ走っていったわい」

ヨヨギが遅刻してたら即刻帰ってやろうと思っていたが、どうやらそれだけは回避出来たようだ。

「おう!揃ったの。これ今日配るビラとアンケート用紙な。」

コンビニから出て来たヨヨギが、サンタモニカファミリーの例の手書きのビラを手渡して来た。

「じゃぁ手順を説明するで。今日は目白女子の入学式があるけ、入学式に向かうカワイイ女の子にそのビラを渡す。」

ここまで来てようやく今日の早起きの用事が何だったのか理解した。相変わらず自分の勘の鈍さに苦笑しながら顔をあげると、三人はタクシーに乗り込もうとしていた。

学生の身分でタクシーで女子大に乗り付けるってのも何だか居心地が悪い。

「西武新宿線の中井まで」

運転手は面食らっていた。普段ならガキで初乗りなんて断わられても当然だが、西武線の駅前から西武線の隣り駅という意味不明な注文に思考停止したのか言われるまま走り出した。

目白女子のキャンパスは高田馬場というよりは圧倒的に中井とか落合の方が近く、何なら最初からそのどちらかの駅で待ち合わせすれば、駅前をベースキャンプに人の流れも読みやすいし勧誘も出来る。

何で高田馬場にしたのよ?と聞くと

「あぁ、さっきまで馬場の雀荘で麻雀やっとったからの。カズヤが裸単騎になってオープンに振り込んでの!このタクシー代は元々はカズヤの金じゃい」

ふてくされるカズヤの横でヨヨギがけたけたと笑いながら手を叩く。当時は仲間内の学生麻雀しか知らない奴とフリー雀荘で打ち慣れた奴とでは腕前に雲泥の差があり、カズヤは前者でヨヨギは後者だった。

(3)に続く