ナギサというのは、平成淫女組としてアテナ映像で活躍した月野なぎさのことである。

さすがAVに出演していただけあって、出勤するとほぼ指名予約で完売となる。

まだ遊んだことのない新規客は当日の朝から予約可能であるが、会員は1日前の前日の朝から指名予約が可能な仕組みになっていて、人気嬢の場合はよほど運がよくない限り、1度目で目当ての女の子を予約することはできない。

当時イメージクラブをはじめとするマンション風俗店は、会員制を謳うところが多く、1年A組では一度来店してプレイしたお客には会員証を渡していた。
 
 
1年A組の会員証には、会員番号と名前(偽名可、佐藤がダントツ多かった)そして、会員専用の予約受付電話番号が書かれている。

この会員専用の番号を知っているかどうか?で、会員かどうか?を判別していた。

ちなみに表にはお客のアリバイ用なのか「STUDIO 1A」と何屋かわからない屋号が書かれていた。
(裏になぞの通し番号と偽名が書いてある時点で怪しさ満点でアリバイどころじゃないと思うのだが…)
 
 
「そうなんですよ〜。ナギサさんの場合、出勤前日から会員様が予約されますので、当日からのご予約のご新規のお客様ですと、ほぼご案内出来ないんです。ちなみに雑誌やマスコミに顔出ししていないルックスのよい子、スタイルのよい子、サービスのよい子など多数取り揃えておりますので、よろしければアルバムを覗きに来てください」

これは、性風俗店に会員制というルールが加わった90年代から今に至るまで何億回と使い続けられているテンプレートである。
 
 
実際に、雑誌やメディアに顔出ししていなくても、一度ついたお客を自分の指名客として積み上げていき、出れば埋まるという状態になるタレントもたまにだが現れる。

今なら”リピート率が高い”と表現するのだろうが、当時1年A組では単純に”戻りがある”などと表現していた。

全く戻せないタレントのことは”ザル”。ルックスもよくメディアに顔出ししているのに戻せないタレントのことは”パンダ”と呼んでいた。(いま思えばパンダに失礼ではあるが、”客寄せパンダ”から来ていたのだろう)
 
 
1年A組は2DKの狭めのマンションを無理矢理プレイルーム2部屋+待ち合い兼プレイルーム(?)とリストに区切ったかなり窮屈な造りで、タレントを待機させる別の部屋もなかったので、タレントを同時に3人以上出勤させられなかった。

その日出勤しているタレントのアルバム(ポラロイド写真とスリーサイズなどのプロフィールデータが一緒に貼付けてある)を見て遊ぶ女の子を選んでもらう。

待ち合いが狭いので、待ち時間の多い女の子を選んだ場合は、会計後一度外出し、案内時間の10分前に再度来店してもらうルールだった。

タレントに満遍なく出勤してもらわないと、待ち時間が出過ぎたりして、電話が鳴るけど客が取れないなんていうこともあり得る。一番勿体ないのは、部屋割れ=部屋があいてしまうことだ。
 
 
「そうなんです。本日のご予約はいっぱいなんです。え〜とですね、ナギサさんの来週の出勤日はですね…」

といいながら、在籍の出勤予定表を見ると、先の予定が全く書き込まれていない。

「申し訳ございません。ナギサさん、撮影と取材の関係でまだ出勤日が確定しておりません。明日中に、来週の出勤を確認しておきますので、明後日以降にご連絡くださいませ。会員様ですと前日からの…」

何とかその場をごまかして電話を切る。
 
 
そして改めて出勤予定表を見て愕然とした。

来週どころか明後日より先の出勤予定が誰1人として書き込まれていなかったからだ。

(7)につづく